マンモグラフィーと乳がん

 

マンモグラフィーの有効性を調べるためにカナダで40~59歳の女性89,835名をマンモグラフィー検査実施組(44,925)とマンモグラフィー検査実施しない組(44,910)にランダムに分け、5年間のマンモグラフィー検査と25年間にわたる追跡調査が行われました。

この対象年齢は、マンモグラフィー検査が有効であるとされている年齢です。

 

http://www.bmj.com/content/348/bmj.g366


Twenty five year follow-up for breast cancer incidence and mortality of the Canadian National Breast Screening Study:
randomised screening trial

このような多くの方の、長年の調査データは、統計処理しないで、その結果を直接示すのがよいと思われるので、以下に結果を引用し、2、3のコメント加えます。そして、最終的にどのように判断するかは読者が判断するのが適切と思われます。

 

テーブル1

マンモグラフィー検査実施組と非実施組の乳がん発生件数の年次変化

マンモグラフィー検査実施組(44,925)

マンモグラフィー非実施組 (44,910)

観測年数

乳がん発生数()

 平均の大きさ(cm) 

乳がん発生数

平均の大きさ(cm)

1

253(0.56%)

1.87

170(0.38%)

2.03

2

109(0.24%)

2.05

89(0.20%)

2.19

3

101(0.22%)

1.64

89(0.20%)

2.11

4

111(0.25%)

2.01

86(0.19%)

2.08

5

92(0.20%)

1.98

90(0.20%)

2.13

1-5の計
(がん発症)

666(1.48%)

1.91

524(1.16%)

2.1

1-5の計
死亡者計

180 (0.40%)

-

171 (0.38%)

-

6

83(0.18%)

2.15

83(0.18%)

2.42

7

82(0.18%)

1.99

93(0.21%)

2.24

8

107(0.24%)

2.01

133(0.30%)

2.04

9

115(0.26%)

1.86

119(0.26%)

1.9

10

127(0.28%)

1.69

128(0.28%)

1.71

6-10の計

514(1.14%)

1.93

556(1.24%)

2.05

11-25の計

2070(4.61%)

2053(4.57%)

6-25の計

2584(5.75%)

2609(5.81%)

1-25の計

3250(7.23%)

3133(7.00%)

 

この乳がん罹患率の調査について、2,3コメントをつけたいと思います。

 

1年目のがん罹患者(発見者)は、マンモグラフィーグループが多い(10,000人中、56名と38名、その差は18/10,000) 、検査としてはある程度有効であると考えられます。

*1〜5年間の合計のがん罹患者(発見者)も、マンモグラフィーグループが多い(10,000人中、148名と116名、その差は32/10,000)

*しかし、5年間の死亡者は、ほとんど変わらない。180(1万人中40)171(1万人中38)。これは、発見はできても治癒できないと考えれば良いのだろうか。

25年間の合計(1万人中723名と700)の罹患者数は変わらない。

 

このガンの罹患は、浸透性のガンを数えています。また、コメントとして、毎年かなりのマンモグラフィーでの誤診が観測され、15年間トータルで、浸透性のガンと診断された484名中106名の誤診が観察されこれは、484名中の22%であり、マンモグラフィー検査を実施した全患者の内の、0.24%に(424名に一人の割合)誤診が観測されたと述べています。

 

テーブル2

20051231日までの乳がんによる死亡数

 

マンモグラフィー検査実施組(44,925)

マンモグラフィー検査非実施組 (44,910)

1年後

52 (0.116%)

26 (0.058%)

1-5年計

180  

171

1-5年計10000人あたり

40.1

38.1

6-25年計

298

321

6-25年計10000人あたり

66.3

71.4

1-25年計

500

505

1-25年計10000人あたり

108.4

110.2

 

この死亡者についての調査に少し、コメントを加えたいと思います。

 

*死亡者は、最初の5年(マンモグラフィー検査を実際に行った期間は)、マンモグラフィー検査実施組180(1万人中40)とマンモグラフィー検査非実施組171(1万人38)ほとんど差がない。

*最初の1年だけを比べると、52(1万人中12)26(1万人中6)で、なぜかマンモグラフィー検査を受けた方の方が多い。これはどのように考えれば良いのだろうか。発見が(10,000人中、56名と38名、その差は18/10,000)であったのに対し、死亡者は(10,000人中、12名と6名、その差は6/10,000)となっており、罹患者中の死亡者の割合は増えている。

25年間合計の死亡者は500名と505名、1万人あたり108名と110名でほとんど差がない。

 

この罹患率と死亡者数の両調査を見ると、大きな差がある、つまりマンモグラフィー検査が本当に有効であるとの裏付け調査とは、言いにくい。

これは、40代、50代という、マンモグラフィーが従来有効であると言われてきた年齢の調査であることを考えると、50代以降の検査を推奨し、40歳以下に関しては、実施しないことを

推奨するというのが、正しいのかもしれなし。

この調査を大きく覆すような調査は、現在まだ見つかっていません。


 

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